品質のデータはなぜ集めても分析に使われないのか

#品質管理#現場データ#見える化#不具合報告

加工機の前でノートパソコンの画面を指さしながら確かめる作業者の手元
写真:Pexels

品質のデータが分析に使われないのは、集めたあとの道筋が三つ欠けているからです。使い道から逆算した記録の項目、分析できる人、そして書いた人から離れても読める記録の形。この記事では、公的な調査で確かめられる数字と、私たちの推測を分けて書きます。

数字で見る現状:品質は見える化で止まりやすい

労働政策研究・研修機構(JILPT)は、2024年11月から12月に、従業員30人以上の製造業2万社を抽出して、デジタル技術の活用を尋ねました(有効回答 3,313社)。デジタル技術で業務改善をしている工程として「品質管理」を挙げた企業は 22.2% で、生産管理の 43.7%、製造の 39.9% を下回っています。規模別では、従業員50人以下が 18.3%、51〜100人が 17.5%、101〜300人が 30.0%、301人以上が 42.0% でした。

もう一つ見たいのは、取り組みの深さです。同じ調査は、デジタル化の中身を「見える化(データの収集・蓄積・分析)」「自動化(データによる制御)」「最適化(自動化を踏まえた工程全体の見直し)」に分け、「見える化のみ」「見える化と自動化、または自動化のみ」「最適化」の三つに排他的に区分しています。

工程見える化のみ見える化と自動化、または自動化のみ最適化
企画・開発・設計49.9%22.8%27.3%
製造35.6%27.6%36.8%
生産管理46.1%19.7%34.1%
品質管理53.7%20.2%26.1%

品質管理は、見える化のみの割合が4工程で最も高く、最適化の割合が最も低くなっています。品質では、見える化の先へ進んだ企業が相対的に少ない。数字から言えるのはここまでです。

注意しておきたいのは、調査が見える化の中身を細かく尋ねていないことです。見える化には「分析」が含まれており、「見える化のみ」の企業が分析まで届いていないとは断定できません。ですから、以下の三つの原因のうち、調査の数字で裏づけられるのは二つ目だけで、ほかは推測です。

原因一:使い道から逆算せずに項目を決めている(推測)

制御盤の画面を指さして確かめる作業者

品質の記録は、もともと監査や顧客への報告のために書かれます。残すことが目的なので、「この半年で、どの工程のどの現象が一番多いか」という問いに答えられる形になっているとは限りません。

その問いに答えるには、現象や工程が、決まった選択肢のどれかとして記録されている必要があります。自由記述に「割れ」「クラック」「ワレ」と三通りの書き方が混ざっていれば、集計の前に誰かが読み直して揃えることになります。これは私たちの推測ですが、集めたのに使われない記録の多くは、この読み直しの手間で止まっているように見えます。

自由記述から項目を取り出す方法は、不具合報告と作業日報をデータに変えるで書きました。ここでは、取り出す前に、何を知りたいかを先に決めることだけを押さえておきます。

原因二:分析できる人が育っていない

ノートパソコンのグラフを見ながら操作する人

こちらは調査の数字があります。JILPT の同じ調査で、何らかの OFF-JT(職場の外での研修)を実施している企業 2,319社に、デジタル技術に関する内容の研修を尋ねると、49.0% は「実施していない」と答えました。実施している企業が挙げた内容は、「一般的なデジタル技術に関する知識・技術の習得」が 25.4%、「デジタル技術の自社への導入・活用・応用」が 23.1% です。

「デジタル技術で収集したデータの分析」を研修として実施している企業は、従業員300人以下では1割に満たず、301人以上でも 17.4% でした。調査は研修だけを見ており、日々の仕事の中で分析を覚えている人がいるかどうかまでは分かりません。それでも、データを集める設備や仕組みに比べて、分析できる人を育てる仕組みは小さいと言えます。

また、品質管理でデジタル技術を使っている企業のうち、AI を導入・活用しているのは 15.8% でした。分析の一部を機械に任せる手もありますが、何を分析させるかを決める人は社内に要ります。

原因三:判断を知る人が書き手で、読み手ではない(推測)

不具合の原因は何か、どう処置するか。この判断はベテランの頭の中にあり、その一部が報告の自由記述として残ります。書いた本人には意味が通じても、別の人が読むと「いつもの手直し」「例の型」のように、何を指すのか分からない記録になります。

JILPT が2026年5月に公表した製造業4,342社の調査(2025年11月から12月実施)では、技能継承を重視する企業は 91.1%(「重視している」51.8%、「やや重視している」39.3%)ですが、「うまくいっている」は 1.9%、「ややうまくいっている」は 31.4% にとどまります。技能継承のために「継承すべき技能の見える化(テキスト化・マニュアル化・デジタル化)」を図っている企業は 31.2% です。

この調査は品質記録を対象にしたものではありません。ただ、判断の根拠を知る人が現場にいるうちに、記録をその人以外にも読める形にしておく必要があるという点は、品質の記録にもそのまま当てはまると私たちは考えています。

三つの原因を下げる条件

三つの原因に、それぞれ下げる条件を対応させます。

原因下げる条件確かめ方
使い道から逆算していない先に「知りたい問い」を3つ決め、そこから記録の項目と選択肢を決める過去の記録で、その3つの問いに答えられるか
分析できる人がいない品質担当と情報システム担当が組み、月に1回は同じ集計を一緒に見る集計から次の処置を決めた例が1件でもあるか
書き手以外が読めない現象・工程・設備を選択肢にして、判断の根拠は一文で書かせる別の担当者が読んで、同じ意味に取れるか

どれも新しい設備を必要としません。大きな投資を考える前に、記録の書き方と見る習慣を変える段階です。

最初にやること:過去50件で半年の問いに答えてみる

最初の作業は、システムを選ぶことではありません。過去半年の不具合報告から50件ほどを選び、次の問いに、読み直さずに答えられるかを試します。

  1. 最も多い現象はどれか。
  2. 最も多い工程または設備はどれか。
  3. 同じ現象が、同じ原因で2回以上起きたものはあるか。

答えるのに全件を読み直す必要があったなら、原因一と原因三の状態です。読み直しのたびに誰が何分かけたかを控えておけば、記録の形を変える価値を、現場にも経営にも数字で説明できます。

答えられたなら、次は原因二です。その集計を、誰が月に一度見るのかを決めてください。

出典

#品質管理#現場データ#見える化#不具合報告

執筆weaveAI 編集部(株式会社サオス)

株式会社サオスで weaveAI を開発しているチームです。製造業の業務システムと AI について、一次情報と実際の検証をもとに解説しています。

運営者情報・編集方針 →

weaveAI FactorySuite

御社の工場で、動かしてみませんか。

マスタ・在庫・製造実績・品質・保全をすぐに使え、足りない画面は AI との対話で作れます。いまお使いの帳票(紙・Excel)があれば、どの画面に置き換わるかを一緒に確認します。