中小製造業の業務システムはなぜ作れないのか

#中小製造業#業務システム#DX

火花を散らして鋼板を切るレーザー加工機のヘッド
写真:Pexels

中小製造業で生産や品質の記録が紙と Excel に残り続けるのは、三つの壁が重なっているからです。合うパッケージが無いこと、作るための費用を出しにくいこと、作ったあとに直し続ける人が社内にいないこと。どれか一つなら越えられますが、三つ同時に越える手段がこれまで無かった。業務システムを持つには、この三つを一度に下げる方法が要ります。

数字で見る現状

紙の書類に手書きで記入する手元

中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」は、中小企業のデジタル化を4段階に分けて尋ねた調査(帝国データバンク、回答 12,215 社)を載せています。「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」と答えた事業者は 15.4% でした。白書は、最も多いのは「段階2」で約6割を占める一方、デジタル化が図られていない事業者が「一定数存在」すると書いています。

この数字だけを見ると、紙の会社は少数派に見えます。ただ、会社全体として何かしらデジタルの道具を使っていることと、工場の生産や品質の記録がデータになっていることは別の話です。

労働政策研究・研修機構(JILPT)が 2024年11〜12月に従業員30人以上の製造業を対象に行った調査(有効回答 3,313 社、2026年4月公表)は、そこをもう少し細かく見ています。デジタル技術で改善を進めている業務として「生産管理」を挙げた企業は、従業員50人以下で 37.9%、301人以上で 64.2% でした。「品質管理」は 50人以下で 18.3%、301人以上で 42.0%。50人以下の企業の 27.5% は、どの業務でも「行っていない」と答えています。

従業員規模生産管理品質管理行っていない
50人以下37.9%18.3%27.5%
301人以上64.2%42.0%(表に記載なし)

情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」でも、DX に取り組んでいる企業の割合は従業員100人以下で 41.6% にとどまり、報告書は「企業規模により二極化している状況が続いている」と書いています。

規模が小さいほど、生産と品質の記録は紙と Excel に残っている。これは個々の会社の意識の問題ではなく、規模に比例して現れる構造の問題として見るべきです。

一つ目の壁:パッケージが業務に合わない

受注生産や多品種少量の工場では、工程の組み方も、帳票の項目も、検査の基準も会社ごとに違います。生産管理パッケージは標準的な流れを前提に作られているので、合わない部分は運用で合わせるか、費用をかけて作り込むことになります。

2025年版の中小企業白書には、広島市の精密板金会社(従業員53人)の事例があります。同社は約3,000万円で市販のソフトを導入しましたが、接続数の上限があり、全工程に入れると1億円を超える費用がかかるため、一部の工程でしか使えませんでした。その後、中小企業8社で共同開発したソフトは、全機能版で約1,000万円です。白書はこの事例の中で、生産管理システムを一から作るには「費用が高額であり、またIT人材の確保も容易ではない」と書いています。

この事例が示すのは、パッケージが高いということより、合わない部分を埋める手段が「もっと高い買い物」しか無かったという点です。

二つ目の壁:ソフトへの投資を出しにくい

同じ2026年版白書の概要は、財務省の法人企業統計から、設備投資に占めるソフトウェア投資の比率を企業規模別に示しています。2025年第4四半期時点(後方4四半期の移動平均)で、中小企業(資本金1千万〜1億円)は 7.9%、大企業(同10億円以上)は 12.9% でした。白書は、中小企業でも資産に計上されない SaaS などの利用は進んでいると補足しています。

DX を進めるうえでの問題を尋ねた2025年版白書の調査では、どの段階の事業者でも「費用の負担が大きい」と「DX を推進する人材が足りない」が上位に来ています。段階2と段階3の事業者では、費用の負担を挙げた割合が 44.7%〜48.8%、人材不足が 50.3%〜51.2% でした。

工作機械なら、何台分の加工が増えるかで投資を説明できます。業務システムの効果は、転記の手間や探す時間、ミスの減少として現れるため、金額にしにくい。効果を説明しにくいものに、大企業並みの金額は出せません。

三つ目の壁:直し続ける人が社内にいない

業務システムは作って終わりではありません。取引先が変われば発注の項目が変わり、規格が変われば検査の項目が変わり、工程を組み替えれば実績の取り方が変わります。

IPA の DX動向2026 では、DX に取り組んでいる企業のうち 85.5% が DX を進める人材が「やや不足」または「大幅に不足」と答え、従業員100人以下の企業でも6割を超えています。少し古いデータですが、総務省の「令和元年版 情報通信白書」は、ICT 人材のうち ICT 企業に所属する人の割合が日本では 72.0%(2015年時点)で、米国の 34.6% より大きく偏っていることを示しています。日本では、業務システムを作れる人の多くが使う会社の外にいます。

社内に直せる人がいなければ、直すたびに外の会社に見積もりを取ることになります。数週間と数十万円がかかる改修は後回しにされ、そのあいだに現場は Excel で穴を埋める。こうして、せっかく入れたシステムの横に Excel が戻ってきます。

三つの壁を一度に下げる条件

ノートパソコンで作業する人

三つの壁を見ると、必要なものの形が見えてきます。

  1. 工場の骨組みが最初からあること。品目、工程、在庫、製造実績、検査結果のように、どの工場にもある部分は標準として持っておき、ゼロから作らない。
  2. 会社ごとの差分を、現場の言葉から短い時間で作れること。帳票の項目や一覧の切り口のような違いは、要件定義書を書かずに画面にできる。
  3. 作ったものが骨組みを壊さないこと。差分の画面が在庫や実績の数字を勝手に書き換えないよう、検査と権限で守られている。

1 だけならパッケージ、2 だけならローコードや個別開発で手に入ります。三つを同時に満たすことが、中小製造業にとっての条件です。

私たちの weaveAI FactorySuite は、この考え方で作っています。マスタ・在庫・製造実績・品質・保全を標準の画面として持ち、足りない画面は AI 工房で対話から作ります。AI が作った画面も、在庫と製造の整合ルール(共用の関数)を通るように作らせることで、標準の画面と同じ帳尻で動きます。

すべての工場に合うわけではありません。すでに MES を使っている工場や、標準の骨組みと業務の形が大きく違う工場では、別の使い方や別の選択肢を考える必要があります。

まず何から始めるか

最初にやることは、システムを選ぶことではなく、いま工場で回っている紙と Excel の帳票を数えることです。何枚あり、誰が書き、どこに転記され、誰が見ているか。転記の回数が多い帳票ほど、データにしたときの効果が大きくなります。その一覧があれば、パッケージで済む部分と、会社ごとに作る必要がある部分の境目が見えてきます。

出典

#中小製造業#業務システム#DX

執筆weaveAI 編集部(株式会社サオス)

株式会社サオスで weaveAI を開発しているチームです。製造業の業務システムと AI について、一次情報と実際の検証をもとに解説しています。

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weaveAI FactorySuite

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